ラグビーというスポーツには、このスポーツの精神性をうまく表現した2つの有名な言葉があります。一つは『No Side』、もう一つは
『One for all,all for one.』という言葉です。
まず、『No Side』という言葉ですが、簡単に言えば、他のスポーツで言うところの「試合終了」「ゲームセット」ということです。
それを、なぜ、ノーサイドと言うのか。最近は、テレビで「ノーサイドゲーム」というドラマが流行っているおかげで、知ってる人も多い
と思いますが、ここで、あらためて説明します。サイドとは敵、味方、両サイドのことを意味します。ノーとはそのサイドがなくなること。
つまり、敵、味方がなくなり、みんなが仲間になるということを意味します。ラグビーは試合前に円陣を組んだ時、国際試合で国歌を歌っ
た時、涙を流す選手がたくさんいます。それだけ、自らの気持を高め、自分の全精力をかけて、全身全霊で、敵と体をぶつけ合います。
「命がけで」と言っても過言ではありません。そして、戦う相手も同じ思いで立ち向かってきます。だからこそ、試合終了の時には、相手
とお互いの健闘を讃えあうことができます。中途半端ではなく、本気にやればやるほど、「この相手がいなかったら、こんな素晴らしいラ
グビーはできなかった。」と、戦った相手に敬意を払い、相手を仲間として尊敬します。これが、「ノーサイドの精神」です。
この『ノーサイドの精神』を表すおもしろいエピソードがあります。あのラグビーの聖地、秩父宮ラグビー場が、1964年(昭和39年)
東京五輪のサッカーの会場となった際、(その後、55年間、他の競技で、使われたことはありませんでしたが…)更衣室・シャワー室を
2チーム分作ってはどうかという意見がありました。ただ、その時「ラグビーの伝統」である「ノーサイドの精神」から、試合後の儀式
(出場選手が対戦チームの枠組みを超えてシャワーを浴びたり、着替えたり、談笑したりする行為)を重視したいという意向が、ラグビー
関係者からあり、それらの計画は却下されたというエピソードです。(ラグビーには、試合後に、敵味方関係なく、互いに健闘を讃えあい、
酒を酌み交わしたり、食事をするアフターマッチファンクションというイベントもあります。)もうすぐ、熊谷でラグビーW杯が開催され
ます。国の威信をかけて、全力をかけて、全身全霊でぶつかり合う両サイド、そして、試合後のノーサイドの美しさをぜひ体験してみてく
ださい。感動の鳥肌もんですよ!『One for all,all for one.』については次回に続きます。